空との距離の取り方

最近、南の方に
空に伸びてゆく塔のようなものがある。
あれはいったい何だろうと
とても気になるのだけれど、
その場所まで歩いて行って
それがいったい何なのか、
確かめることが出来ない。
監視塔のようにも給水塔のようにも
あるいは巨大な煙突のようにも
見えるけれど、
それが何か、分かってしまったら
きっと現実がどろりと忍び込んできて
とてもつまらないものに変化し、
ただ目に飛び込んで来る光の束の
中にある情報のひとつとして
景色の中に溶けてしまうだろう。
言ってみればそれは
片思いに似ている。
そうか、きっとそれは
そのままでよいのだ。
明け方のベランダに立って
朝日を浴びる塔を
いつまでも僕は見ていた。

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