水無月のこと

梅雨の合間、短い晴れた時間。
あたりは水をたっぷり含ませた筆で
塗りたくったように
どこもかしこもしっとり濡れている。
跳ね回る光をあつめたくて
カメラを向けるけれど、
ふたつの目に見えるこの世界の
美しさを切り取ることなどできない。
そのことを、残念に思う気持ちと
でも、それこそが生きている
意味なのだと発見して
嬉しい気持ちが混ざって
それから空を見て、
空に昇ってゆくような気持ち。
そんな日が度々やってくる。
それは、いとしさに似ている。
ペットボトルに沢山ついた水滴を
指先でなぞりながら
空気中の水分が形になるこの季節に
あったことを思い出してみる。

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