やさしいきせき

ものごとには、始まりと、
それから終わりがあります。
物語も同じです。
そういう基本的なことを時々忘れていて
永遠というものを信じたり
そもそも終わりというものを
無かったことにしたり
そうしないと苦しみから逃れられない
そんな場合が多いのです。
今日も夕陽を見ました。
いつも、夕陽ばかりを見ます。
朝陽が登ってくるところは
滅多に見ないのに、夕陽が沈むところは
毎日のように見てしまって
とてもバランスが悪いです。
始まりを強く意識することがなくて
終わるところばかり見るからです。
始まりというものは
見ようとしないと見ることができないのに、
終わりというものは
見たくなくても見えてしまうものなのです。
だいたい理不尽にできているのです
世の中というものは。
分かっていたでしょう。
空いっぱいに
絹のような雲が広がっていて、
太陽が行ってしまうところに
僕は出くわして、
飛行機がその太陽を追いかけてゆくのを
しばらくの間見ていました。
その白い軌跡が伸びてゆくのを
見ていることしかできなかったのです。

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