暗い夜が増している。
夜更けの街を帰ってきた。
ふと見上げると、半分の月が低い位置にあって
その意外な大きさに少し驚いて
信号の赤で初めて濡れた路面に気付くいた。
いつのまにか少し雨が降ったようだった。
春は近い。
あと、ひとつきもすると、世界に桜が
咲き乱れているなんて想像できない。
教訓よりインスピレーションを
もたらすことが必要だと思う。
ささやかな幸福の欠片のようなものを
いくら集めてみても
隅っこにあいた針のように小さな穴から
みんな漏れ出して何も無かったことになってしまう。
あるいは破裂した風船のようにはじけて消えてしまって、
気付くと空っぽになった黒い箱の中に横たわっている。
傷つけなければ、傷つかないという論理はまったく正しくない。
正しく生きたいと思っているわけではないはずなのだが、
どこかそういうふうに出来てしまっているようで、
それは無いものを妄想する出来損ないの機械のようだ。
少なくとも、今は、よくないことを
遠ざける必要があるけれど、
いつも、不可抗力を動力として生きてきたせいで
その方法というものを思いつかない。