昨夜は夜半過ぎから雪になった。
空の白い破片が、静かに落ちてきて地表でとける。
僕は深夜のベランダでそれを眺めていた。
雪を見るのはこの冬初めてだった。
こんな夜が何度でもやってくるだろうと
どこかで思っているが、このような夜はきっと
人生において数えられるだけしかないのだろう。
この間、街のギャラリーで絵を見た。
相変わらず街は人で溢れていて、
空は泣き出しそうだったけれど
ギャラリーは絵を展示してあるにもかかわらず
暖房が効きすぎるぐらい効いていて
僕はマフラーを取らなければならなかった。
絵は、鏡のようだといつも思う。
鏡は姿を映し、絵は心を映す。
こころの身だしなみを整えるには絵が必要なのだ。
そうして青い絵をじっと見ていると
自分の中の間違っていないものと、
折れ曲がったものが見えてくる。
全ては反射なのだと思う。
街を離れる前に珈琲を飲むべきだと思う。
二十五グラムの豆に百㏄の湯を注ぐことが
一般的なのかどうか分からないけれど、そういう
珈琲の出てくる店で現実に自分を馴染ませる。
珈琲はまじないの要素である。