懐かしさが見つからないんです

実は、自分は懐かしさというものが分からない。
言葉では時々「懐かしい」と言う。言ってみる。
しかし内心、懐かしいとは、いったいどういうことだろう
と思っている。
昔の音楽を聴いても、そこには懐かしさではなくて
何か新しさを発見してしまうし、テレビで古いアイドル
が歌唱する映像が流れても、へぇ、こんなに初々しい頃の
彼女を自分は見ただろうかと思い、新しい発見をしてしまう。
旧友に久しぶりに会っても、それなりに歳を取っているから
昔とはかなり違う風貌になっていて、やっぱり何かしら
新しさ感じるし、昔よく行った場所に行ってみても
そこには今の時間が流れていて、懐かしさを探せない。
もしかして自分は、過去のある時点からの距離を測ることが
出来ないのだろうか。
現在も過去も混ざり合っているのだとすると、それはぼけた
年寄りと同じようなものだろうか。
みんなが言う「懐かしい」という感覚を少し味わってみたい
と思う。懐かしさに憧れている。けれど僕にはいつも何も
かもが新しくて、懐かしくなれない。
世界は足下に広がっていて、僕は少しも遠くまで来てはいないのだ。
そう思う。

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