誰も知らない

誰も僕のことを知らなければ、
僕はこの世界に存在しないのと同じだろうか。
そうだとすると、この世界というのは
地球の上のことではなくて、人々の脳味噌の中に
あるという心のことかもしれない。
世界は細かく分割されていて疎に結合している。
蠢いているそれらは、互いに通信して様々なものを
共有しようとする。音も光も匂いも味も。
世界は蜘蛛の糸のように複雑にからみあっていて
人は、それらの中に少しずつ存在している。
そして、それと同時に自分も世界の一部でもある。
強くこの世に存在したいと願いながら、
効果的な方法が見つけられない。
結局のところだからなんなの、という疑念が沸いてきて
不要なもののひとつに自分を加えてみたりする。
そして、深い眠りの底で何も考えないようにする。
暮れというのは、そういうことを強く感じる季節なんだね。

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