駅前を歩いていたら、黄色と黒に塗り分けられた棒が飛んできて、
あれ、と思ったら、その後から、オレンジ色のコーンが飛んできた。
見ると革ジャンを着た、若い男が、工事の準備のためだろう、
道路脇に積まれたそういった道具を片っ端から投げ飛ばしていた。
酔っているのか、大変な剣幕で「てめぇふざけんな」とか、
「中途半端なケンカを売りやがって」とかなんとか怒鳴り散らしながら。
その投げ方は激しくて、近寄ると身の危険を感じるくらいだった。
しかし、周りを見ると、相手となるような人は誰もいなかった。
男はひとりで荒れ狂っており、人々は遠巻きに見ているだけだった。
やはり怒りというのは、道の端にも転がっている。
そして、みんなは、冷めた目で見るだけなのだ。
同時に自分も、そのうちのひとりだということが分かった。
冬というのは、気温が下がることによって、
そうやって自分の身の程が分かる季節なのだろう。
自分のうちの、ベランダが向いている方位を勘違いしていた。
真南は、横浜あるいは真鶴の方面で、少し東寄りが羽田方向なのだった。
真南が羽田方向かと思っていた。
真鶴には、いつかいってみたい。
行く気になれば、車でいつでも行けるのだけれど。
夜、羽田の方を見ると、上空に六つの光の点があった。
それは、ゆっくりと動いていた。
あれは、たぶん飛行機だ。
飛行機が六機も、羽田の上空を旋回している。
滑走路のトラブルだろうか、順番待ちだろうか。
そういえば、ずっと前、博多から飛行機で帰ってきた時、
滑走路が混雑しているということで、ずっと、上空を
ぐるぐると回っていたことがあった。
あの時も夜で、湾岸の光が何だか夢のように見えた。
羽田上空の光は、順番に地上に降りてゆく。
星が、沈むみたいだ、と思った。