夕方、五時を過ぎると何もかもがすっかり闇に沈む。
「日が短くなりましたね」と背中合わせに座っている山村くんが言う。
僕はディスプレイから目を離し、部長の頭越しに窓の外を眺めて
「もう冬だしな」と言った。夕日の赤がほんのりと残っていた。
そうなのだ、日が短くなるから冬なのだ。そう思う。
夜は確かに長くなった。しかし、時間の間隔は同じだ。
「秋の夜長」という言葉はおかしいと、小さい頃から思っている。
暗闇は誰のためにあるのだろうか。
暗くなったら仕事をやめて、明るくなるまで眠っている
というような暮らしだったらいいのに、なんて時々思うけれど
きっとそういう生活に慣れると、つまらないものだろう。
気づいたら虫が鳴かなくなっている。死んだのだみんな。
生きている間、虫は鳴き続けるのだなと思う。
それに比べると自分などはおとなしいものだ鳴かないし。
しかし、暗がりというのは落ち着くが寂しいものだ。
街を通ると、あちこちでライトアップが始まっている。
木々に電飾が巻き付けられていて、光の枝が空に伸びている。
夜は夜のままでいいのに。
光なんかで、暮れてゆく季節を追い立てなくてもいいのに。
暗闇の好きな僕は思う。
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