台風一過という言葉には青空が含まれている。
そう思っていたけれど、鬱陶しい曇り空が続き、
夜になって雨が降り始めた。
台風は青空を連れてこなかった。
別に慣例に従わなければならないわけではないが、
望み通りにならないということは、がっかりすることである。
僕はコンビニエンスストアで、60センチのビニール傘を買った。
雨は、ビニール傘の上に降って、雨粒となって流れてゆく。
僕はバスを待ちながら、それを見ていた。
渋谷の街を歩いていると、スパイダーマンが坂を
のぼってくるところに出会った。
隣には魔女が居て、仮面を付けた男と腕を組んでいて、
その隣には頭に合格という鉢巻きをした女が歩いていた。
今夜はハロウィンという日らしく、このような格好で
街を歩いても恥ずかしくない日らしかった。
調べてみると、ハロウィンというのは、盆と正月と秋祭りが
一緒に来たような日ということのようで、しかし本当は
何の日なのか、僕にはよく分からない。
しかし、世の中には何の日か分からなくても、いい事もあるのだろう。
誰かが祝えば、一緒に祝うというのが、人というものだし、
火を付けた紙が、端から燃えるように広がってゆくのが
何かの記念日というものことなのだろう。
夜が更けて、雨は激しくなって、
音を立てて、地表に降り注いでいる。
十一月が始まる。