季節の含有率

夜になって風が強くなった。
ごうごうと窓に吹き付ける風の音を聴く。
天気図の等圧線は縦縞で冬模様。
しかし、この頃は季節が唐突に移り変わるような気がする。
以前は、春には夏が、夏には秋が、秋には冬が、冬には春が
少しずつ含まれていて、徐々にその色が濃くなっていったのに、
今は、随分と含有率が少なくなった。
スケジュール帳に、明日から冬と書き込まれているみたいに。
生き物は何事にも支度というものが必要で
それが情緒というものだったのになと思う。
何かの中に微量に含まれているものに、ふと気付いた時の
ささやかな喜びのようなものが失われて、
何もかもが直接的なことばかりになってゆくのは
つまらないことだなと思う。

今日も帰りが遅くなってしまって、
ご飯を作るのが面倒だった。
だから駅ナカで、ロールキャベツを買った。
そういえば、昔初めて東京に来たときに
新宿のアルタの裏で、ロールキャベツを食べた。
何かの雑誌で、そのロールキャベツが有名だと書いて
あったから、わざわざ出向いたのだ。
ハンバーグよりは手が込んだ料理のような気がして
食べてみようという気になったんだと思う。
あのロールキャベツ屋はまだあるだろうか。
そんな事を考えながら、ロールキャベツを食べた。
考えてみると、すっぱい煮込み料理というものを
僕はそれほど食べた事がなく、経験値が不足しているせいか
それが美味しいのか美味しくないのかよく分からなかった。
ただロールキャベツだった。

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