ライトノベル、ジュブナイル、ヤングアダルト。
ジャンルというのは明確な決まりがあるわけではないから、
いつも曖昧で境目が分からない。
たぶんそれは囲いではなくて、方向性なのだと思う。
どちらの方向に向いているのかということを控えめに表している。
この本には四つの短編が収められている。
「百瀬、こっちを向いて。」「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」
どれも、舞台は高校、百瀬…以外の主人公はみんな女の子。
いずれも、深入りしてどろどろになることなく、適切な距離をたもって
美しいままで恋愛を綴っており、適当にどたばたのエピソードも入れてあり、
それが現実感から、少し離れたところに世界を構築する。
そういう意味で、これはライトノベルという方向性を持っている
と言ってよいと思う。実際に読んでいて草臥れることはない。
そして時々、きらめく美しい言葉を発見してはっとする。
裏書きに「恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集」
などと陳腐な言葉がそえてあるが、そういうものではもちろんなくて、
言ってみれば「恋愛のよい面のみを収集して箱詰めにした宝石箱的小説集」かな。
暗がりから世界を見たい僕には、少し恥ずかしいくらいに
陽のあたる小説でした。まぁたまにはいいでしょう。