スーパーストア

夜、駅前のスーパーは混み合っている。
住宅街にあるそれよりも、仕事帰りの人々が多いような気がする。
それほど広くない店内には、沢山の品物がぎっしりと陳列してある。
オレンジ色の籠をぶつけ合いながら、通らなければならないほどだ。
僕は余計なものを買わないように、なるべく今日必要なものだけを
今日買うようにして、籠に入れ、レジに並んだ。
ふくよかなレジの女性は五十歳前後だろうか
何とかカードをお持ちですか、と早口で僕に言った。
ないです。短くそう答える僕と、レジの女性は
鶏がよくそうするように、首を動かして僕の顔とオレンジ色の籠を二往復見た。
それから総菜を小さなポリ袋に入れ、そして
すべての品物を丁寧に袋に詰め、僕に渡した。
僕がお金をトレイに置くと、彼女はまた、お金と僕の顔を
見比べるように交互に見て、それから精算してお釣りを渡した。
ありがとうございます、と僕は言って、彼女も同じ事を言った。
そして僕は袋をさげ、出口に向かって歩いた。
僕の後ろから、彼女が次の客に「どうもおまたせしました」と
言っているのが聞こえた。
あの人は、どこかで会ったことのある人だっただろうか、
と僕は思いながら、夜のバス停に歩いた。

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